情報通信と鉄道の接点から見たICTの課題

平成30年6月21日(木)、PTC日本委員会主催によるセミナー「日本PTCセミナー2018」が、新宿三井倶楽部で(東京都新宿区)で開催された。前UQコミュニケーションズ株式会社副社長で現在は日本電設工業株式会社顧問の有田雅紀氏をお迎えし、「情報通信と鉄道の接点から見たICTの課題」をテーマに講演していただいた。

有田氏は、日本国有鉄道で光ファイバー通信や列車無線の導入の計画に従事された後、日本テレコム株式会社の技術部や総合企画本部などを経て、東日本旅客鉄道株式会社ではカード事業部やIT・Suica事業本部に所属するなど、鉄道との接点を持ちながら情報通信に携わってこられた。

まず、有田氏はICTがライフスタイルに与えた影響について解説した。とりわけ、WiMAXの鉄道分野への応用について言及。成田エクスプレスなどにおけるインターネット対応や山手線アプリの開発、トレイビジョン(電社内ドア上のデジタルサイネージ)などを紹介した上で、WiMAXを活用したメンテナンスについて述べました。

有田氏は、「最近注目されている安全・安心対策として、Condition Based Maintenanceと呼ばれるものがあります。これはメンテナンスの確信とも言えるもので、具体的には、線路の状態や架線の摩耗といったことをモニタリングして、データの変化分の推移から判断し、故障や事故に至る前に取替計画に反映させていきます。従来の定期的なメンテナンスから、まったく新しい形へと革新が振興しているところです。」と述べられた。

続いて有田氏は、ICTの今後の展開について議論を進めた。「社会の基礎インフラ」という立場をベースに、ICTの抱える課題を明らかにしていった。

2015年に長野・金沢駅間が開業した北陸新幹線や、2016年に完成した交通ターミナルの「バスタ新宿」において、未だにネットや携帯電話への対策ができていない現状を指摘した上で、前広なエリア充実策・容量対策の重要性を説きました。

「これはバスタ新宿に限らない話ですが、いったサービスを開始してしまうと、いろいろな制約がかかってしまいます。 結局、コストも時間もかかる。社会の基礎インフラであるならば、前広な対応が欠かせないということを、現場サイドからも世の中にアピールしていく必要があると思います。」と有田氏が解説されました。

さらに有田氏は、日本の人口が減少していく中で、現在の日本人の生活を維持・向上させるには。ますますICTが不可欠との認識を示した。業際を超えた広汎なコラボレーションや人材育成、リスクテイク、イノベーションの重要性を強調しつつ、講演を締めくくった。

講演の後の質疑応答では活発な意見交換が行なわれた。自由闊達なムードのなか、セミナーは成功裏に終わった。